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網岡健司「地域進化論」を考える 〜持続可能なまちづくりのビジョン、ミッション、パッション〜 第二話

  • 2018年11月13日
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第一回では、今、日本に失われている「希望」を取り戻すことが求められており、まちづくりとは地域に「希望」を植える作業に他ならないのではないか、そして、その際に依って立つべきは「進化」というモノサシではないか、という問題提起までをお話しました。
それでは、地域の「進化」に求められるものは何でしょうか?

地域の進化

It is not the strongest of the species that survive, nor the most intelligent
but the ones most responsive to change.

生き残るのは、最も強い種ではない。最も賢い種でもない。
変化に最も敏感に反応できる種である。

「進化論」で有名なチャールズ・ダーウイン博士の名言とされている言葉です。
(本当にダーウイン博士の発言であるかはかなり疑わしいようですが、)
生き残ること、すなわち「適者生存」のための要因は、「強いこと」でもなく「賢いこと」でもなく、「変化への対応力」であるというメッセージは強いインパクトを持ち、数多くの場面で引用され、語り継がれてきました。

地域の進化も、これと同様に、それぞれの地域を取り巻く環境やその変化に敏感に対応することにより実現されるもの、ということになりますが、これがどうして私たちにとってはなかなか難しい問題です。何故なら、変化を恐れるのは人間のどうやら本能らしいからです。
例えば、大昔の狩猟時代に見知らぬ土地に移住したりすることは大きなリスクを伴い生命の危険さえあったことから、現状維持が生存するための最善の戦略として何万年も遺伝子に刷り込まれてきたのではないかとの説があるようです。このように変化を避け現状を維持しようとする傾向は「現状維持バイアス」とも呼ばれて、これがいわゆる「茹でガエル」現象につながったりするとも言われています。
このような傾向に対して、米国35代大統領John F. Kennedy氏も以下のように警鐘を鳴らし自らを戒めました。

“There are risks and costs to a program of action, but they are far less than the long-range risks and costs of comfortable inaction.”
(行動にはつねに危険や代償が伴うものだ。しかしそれらは、行動せずに楽を決めこんだときの長期的なリスクやコストと比較すれば、取るに足らないものだ。)

それでは、これまでの慣習や常識に縛られず、現状維持バイアスを振り払って、変化に向けた行動に踏み出すために必要となるのは何でしょうか?
これには皆さんそれぞれの考え方があると思いますが、私は、ビジョン、ミッション、パッションの3つではないかと考えています。

環境変化に敏感に対応して変化すると言っても、一時の流行や目先の損得、あるいは隣の青い芝生はたまた根拠のないバラ色の未来像を見ては右往左往しているだけでは、「付和雷同」、「軽挙妄動」に過ぎません。
真に「不易流行」、「機を見て敏」たるには、まず、世の中の動きの長期的展望や本質を見極め、地域のあるべき未来を見通し、構想する力、それらを見える化する力、すなわちビジョンが求められます。
そして、そのビジョンに基づいて、自らの地域の資源や特性を勘案して進むべき道を選択し、守るべきもの、捨てるべきもの、変えるべきものを決断して、実現に向けた具体的な行動につなげる使命感、ミッション。
さらに、「変化」を起こす行動に伴い、地域が必ず直面するであろう様々な副作用や不安、痛みを一丸となって乗り越えていくためには、理屈ではなく、なんとしてでも地域の未来を切り拓いていこうとする勇気と情熱、パッションが不可欠ではないか、と思うのです。

さて、今回はここまでとします。次回は、上記に挙げた地域の進化に必要な3要素の内、ビジョンについてもう少し考えてみたいと思います。

アバター

網岡 健司

株式会社エックス都市研究所参与
名古屋大学大学院工学部原子核工学科修了
新日本製鐵株式会社(現 日本製鉄株式会社)に入社し、八幡製鐵所配属。同社のスペースワールド班に参加、以降一貫して北九州市八幡東田地区の都市再開発事業などの地域開発に携わる。
北九州市特区専門官、参与ならびに北九州市立大学院特任教授等を歴任(非常勤)、産官学一体の立場から持続可能なまちづくり推進の一環として社会変革を促す地域プロジェクトを企画・プロデュース。「情報の港」北九州e-PORT構想やエネルギー革命をもたらす東田コジェネ事業、「環境パスポート事業」、スマートコミュニティ実証事業、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録など数々のプロジェクトを手掛けている。
他にNPO法人里山を考える会理事、九州国際大学大学院特任教授「地域政策論」担当、八幡東田まちづくり連絡会会長などを務める。

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