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信時正人の都市学入門(7)アーバンデザインセンターとまちなか広場

  • 2018年10月16日
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画像:信時正人の都市学入門-7 アーバンデザインセンターとまちなか広場

先日、10月4,5,6日に松山市で第6回全国まちなか広場研究会と第6回アーバンデザインセンター(UDC)会議の連携開催のイベントが行われました。
これまではバラバラに開催していたのですが、去年、まちなか広場研究会の大賞を、松山にあるアーバンデザインセンター松山(UDCM)の企画・運営・管理による「みんなの広場」が受賞したこともあって、今年は初めての連携開催となったものです。

私もこれまで何回かまちなか広場研究会の大会にも参加してきましたし、UDC会議の主催メンバーでもありますので、これらが一緒に連携して・・・ということは、私自身、非常に嬉しいことでありました。
松山市さんの全面的なご協力もあって、広場作り、まちづくりの実践者、200人を越す方々が全国から集まってきて、それぞれに交流を深めた三日間でした。

まちなか広場研究会の方は、主催が山下裕子さん、広場に関する本も出している人ですが、私が初めてお会いしたのは、富山市のグランドプラザにまだいらっしゃる時でした。
横浜市と富山市は実は、芸術分野での連携をしている若者が多くいて、私が横浜市で担当していました地球温暖化対策の世界でも、両都市とも環境モデル都市であり、環境未来都市でありまして、この辺でも交流はそれなりにあったのですが、その時に官民連携で横浜市から視察団を組んで富山市に行った際に案内をしてくれたのが、山下さんでした。

グランドプラザを稼働率100%の広場にした張本人。
明るくて人懐こい、企画力と行動力の人です。
それでいて、自分が自分が・・・ということはしない、今時珍しく、素晴らしい方です。
この人のやっている広場の研究会なら行ってみよう、と思ったわけです。
富山から始まって、久留米、明石、その他種々の地域で、魅力ある広場作りで引っ張りだこです。今は八戸にいて頑張っておられるようです。

“これからの時代に求められる都市文化の成熟には「まちなか広場」によって創出されるゆとりある時間と空間が必要なのではないだろうか。そしてそうしたゆとりから人と人とがお互いを知り、感じ合い、心を通わし、新しい関係が生まれることと考えたい。そして、この関係性こそがまちなかに誕生する新しいソーシャルキャピタルであり、それを醸成することが住民に尊い時間をもたらす次の時代の都市を創出できるのだという可能性を訴えたい”
これは今回のパンフレットに書かれたまちなか広場研究会の説明文です。

最近、東京駅丸の内側にも大きな広場ができました。
単に広場が有る、というだけではなくて、この街中の白地といって良い場所に如何に色をつけていくのか、運営していくのか、街の栄枯盛衰を図るものと言えるのではないか、と思います。

海外では街の真ん中に広場があることは当たり前の世界でありますが、効率性を重視しがちだった日本の街では、そんな広場があるなら、如何にお金を産むことができるのかを考えて、という発想でやってきたのではないでしょうか。
また、そうであればこそ、まちなか広場研究会では広場への価値をいかに作っていくのかを基本においており、そこをいかに運用、経営していくのかが非常に重要で、トータルのシティーマネジメントの根幹にも関わってくるものと考えています。

片や、アーバンデザインセンター、UDC。これの日本の第一号は千葉県柏市の柏の葉地区にできている、UDCK(柏の葉アーバンデザインセンター)です。
私が東大の大学院新領域創成科学研究科の特任教授時代、2006年になりますが、その年の11月に設立されました。
都市工学科の先輩でもある故 北沢猛先生が企画し、そのままセンター長をされ、私は事務局総長、ということで始まりました。
発想、提案からなんと半年で開業(?)にこぎつけました。
公・民・学連携でフラットな関係の下にまちづくりを進めていくエンジンとして、の位置づけです。
固定化された枠組みを超え、地域のまちづくり組織や拠点として、課題解決型、未来創造型のまちづくりを進めていきます。
東大、千葉大、柏市、三井不動産、地元のまちづくり協議会等の公・民・学のアライアンスのもとに設立しました。

海外では既に10以上のアーバンデザインのセンターというべき存在がありました。
その地域の都市開発の情報が模型や書面で、そこにくれば、なんでもわかるようになっているようでした。街の情報センターという位置づけでもあります(これは今後特に、データ駆動型の都市作りへの胎動という意味で、意識していかないといけない部分だと思っています。)。

現在(2018年9月末)、全国に19のUDCがあります。
成り立ちはそれぞれ違います。
私自身は、UDCの全国展開を目指し、種々の支援と研究、人材教育等を図っている(一社)アーバンデザインイニシアチブ(UDCI)の理事をしています。
他にもUDCSEA(ヨコハマ海洋環境未来都市研究会)、UDCID(井土ヶ谷アーバンデザインセンター)、最近設立されたUDC078(神戸アーバンデザインセンター)にも顧問等で関わっています。

また、UDCイニシアチブのほかのメンバーもそうなのですが、まだ設立できていない自治体の相談にも乗っていて、運営への協力も一部しています。
近々、20は超えることでしょうが、目標は100です。
これは、故 北沢先生との約束です。
まぁ、実際には数にはこだわらなくても、質の良いUDCを設立していきたいと考えています。

これまでの延長線上には未来の都市はないのでは、と皆が感じているように、我々は認識します。
今の都市計画法はもう半世紀前のものです。
少子高齢化、人口減、地球温暖化対策、ITの進展、AI、IoT、防災対策(これまでにない大雨や大風、地震)、空家対策、etc.

これまでの都市計画にはなかった要素を計画に入れていく必要が出てきていると思います。
これまでの計画作りの部署だけではない全市的な対応が必要だということです。
医療の面において、対症療法ではなく、東洋医学的な全身を見た上での総合医局的医療の必要性が叫ばれているのと同じではないかと思うのです。
そして、その根本には公と民と学のフラットな中でのアイデア出し、実行、経営が求められているということなのだと考えています。

UDCに関しては、また詳しく書いていきたいと思っています。

アバター

信時 正人

株式会社エックス都市研究所理事 和歌山県出身
東京大学都市工学科卒
三菱商事株式会社(情報産業、開発建設、金融)を経て、(財)2005年日本国際博覧会協会(政府出展事業 企画・催事室長:日本館の企画・運営、政府主催催事担当)、東京大学大学院特任教授(UDCK、柏の葉アーバンデザインセンターの立ち上げ)、横浜市入庁後に都市経営局都市経営戦略担当理事、地球温暖化対策事業本部長等を歴任(横浜スマートシティプロジェクト、環境未来都市等推進)。
東京大学まちづくり大学院非常勤講師、横浜国大客員教授等、他に(一社)UDCイニシアチブ理事(UDCの拡大と立ち上げ支援を目的に出口東大教授等と設立)

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