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信時正人の都市学入門(6)SDGs未来都市

  • 2018年09月13日
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画像:信時正人の都市学入門-6 SDGs未来都市

画像:信時正人の都市学入門-6 SDGs未来都市

この3月に内閣府が募集していた、「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」の選定の発表がありました。
私がいた横浜市もその両方に選定され、今後、SDGsの世界でもリーダーシップを取ってやっていこうと動いていきます。

2008年に環境モデル都市が選定(内閣府)され、その後、2010年に次世代エネルギー・社会システム実証事業地域の選定(経済産業省)があり、2011年には環境未来都市の選定(内閣府)がありました。
SDGs未来都市はそれらを継いでいく存在になるのですが、私はそれらの前者三つに関しては責任者として関わり、SDGs未来都市については市の検討委員会の委員として関わりました。

今回は、都道府県の参加も多くありましたが、SDGs未来都市に29自治体が選ばれ、自治体SDGsモデル事業には10自治体が選ばれました。
モデル事業には国から4,000万円の投入があり、事業計画作りや実際の事業に活用していきます。

横浜市は、2008年に環境モデル都市に選定されて以降、種々積み上げてきたものを元に、今度はSDGs未来都市へ、という流れにあります。
この間、環境未来都市の目的でもある、地球温暖化対策に加えて、超高齢化への対応も鋭意進めてきていました。
これは結果的に、横浜市が、OECDより「高齢社会における持続可能な都市政策」プロジェクトのケーススタディー都市に、日本では富山市とともに選定されることにもつながりました。

この分野も、私のいた温暖化対策統括本部の仕事なのか? と思われる方も多いかとは思いますが、こういった横串を刺すことの窓口はすべて、この本部でやっていました。
建制順が一位ということもありますが、複数の部署にまたがるものは、温暖化対策統括本部がやることで納得されていました。
政策局という部署もあるのですが、政策立案だけではなく事業を進めていくのも、我が温暖化対策統括本部の仕事です。
その上で、SDGs未来都市の選定となったわけです。

SDGs(持続可能な開発目標)は、ご存知のように17のゴールと169のターゲットからなっています。
企業の方がやはり動きは早く、日本の企業でもSDGs宣言をしているところは昨年から多くなってきています。
日本ではまだ認識が薄いとは思いますが、海外で、仕事を進めていこうとするなら、SDGs宣言をしていなければビジネスにならない事例も出てきているという現実もあります。

世界ではSDGsに基づいたESG(環境、社会、ガバナンス)経営、という言葉も当たり前になりつつあります。
石炭火力への投資がなくなりつつあるというのも、その流れの一つです。

では、海外とは関係のない自治体は何故、SDGsなのか。
それは、自治体の姿勢を表し、行く末の指標ともなり得るからです。
また、企業誘致の際には、SDGs都市かそうでないか、で企業による、その都市への評価が変わってきます。投資をする価値があるのかどうか、という部分にも影響するのです。

横浜市提案のモデル事業は、“連携”による横浜型「大都市モデル」創出事業としての、SDGsデザインセンター、の創設です。

キーワードは連携です。
種々の連携のハブにこのセンターはなっていくということです。
テーマとしての「環境、経済、社会」、「産官学市民」、「国内と海外」、「地域内と地域外」、「老若男女」、etc.これらの有機的な融合とモデル創出によって、課題解決を図っていく、というものです。

具体論はこれからの事業によるので後に譲りますが、自治体経営としても、縦割りの排除は以前より言われてきているところですが、総合的に組み合わせていかないと、もう種々の課題は解決できない、ということを認識することだと思います。

SDGsの17の目標値を図にしたカラフルなマークがありますが、あるNGOは、これにクレームをつけたそうです。
「17がバラバラに存在する、というイメージになっている。」と。
「本来、その17はすべて繋がっているものなんだ、そこを基本的に認識しないと目的は達せられない。」ということを言っているようです。
私も本当にその通りだと思います。

これまでも、自治体等が作成する○○総合計画、○○基本計画というモノに関しては(我が社もよく業務上関わっていますが)、私は、単なるカタログだと、思っています。
一つ一つはいいことが書いてありますが、それで完結(本当は完結ではないのに)しています。相互の関係性は見事に無いです。
前文とやらが書かれているけれど、その宣言めいたものとの関連性が認められないものも大いにあります。

SDGsの17の目標値のそれぞれについて、自治体は全部に当てはまる事業をしていると思います。
でも当てはまったから良いというものでは絶対にないです。
街づくりは物語である、と私は学んできました。
また、人に人格があるように、都市には都市格があると思っています。
それが何なのか、各都市はまずそれを見極めて、どこから始めるのでも良い、SDGsの17をその都市なりに紡いでいくこと、が必要だと思います。

総合カタログではなく小説作り?! です。
夢があるではないですか。
SDGs未来都市は、それを先導しなくてはならないと思います。

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信時 正人

株式会社エックス都市研究所理事 和歌山県出身
東京大学都市工学科卒
三菱商事株式会社(情報産業、開発建設、金融)を経て、(財)2005年日本国際博覧会協会(政府出展事業 企画・催事室長:日本館の企画・運営、政府主催催事担当)、東京大学大学院特任教授(UDCK、柏の葉アーバンデザインセンターの立ち上げ)、横浜市入庁後に都市経営局都市経営戦略担当理事、地球温暖化対策事業本部長等を歴任(横浜スマートシティプロジェクト、環境未来都市等推進)。
東京大学まちづくり大学院非常勤講師、横浜国大客員教授等、他に(一社)UDCイニシアチブ理事(UDCの拡大と立ち上げ支援を目的に出口東大教授等と設立)

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